倉庫

自分用倉庫を公開する感じ

蠍の毒はよくまわる

※R-18

※BL

※兄弟(双子) 

 

数日前に書いた双子の話 - 倉庫の、エロシーンを書いたものです。そちらを先に読んだ方が楽しめるかもしれないけど読まなくても大丈夫です。

エーゼルとピオンの話。

 

 

 乱暴に押し倒されたベッドは、決して柔らかいものではなかった。

 埃のかぶった不衛生なシーツは、俺が沈み込むと同時にむせ返る程度の塵を空気中に舞わせたが、ピオンはそれを微塵も気にせずに俺の首筋にその鋭い歯を食い込ませるのだった。
「いっ…て、噛まないって約束だろ」
「……」
「聞こえてねーなコイツ……」
 肩から聞こえる呼吸音は激しく、噛まれた皮膚はブチブチと悲鳴を上げ、ピオンの口を血で濡らした。
 こういったことは、一度や二度じゃない。こいつが正気を失えば、正気になるまで俺がこいつの相手をする。兄弟故の責任感か、はたまたもっと違う感情なのか。今更怒りも感じない。
 少し麻痺しているとは思うが、痛みさえ軽減できればそんなに悪い物でもないかもしれない。と最近は思い始めていてため息が出る。割り入った足の間に無理やりこすり付けられる熱はさして不快なものでもなく、所謂レイプと言った物であるだろうに、のんきなものだ。
 痛みに耐えながら身に着けている物を脱いでゆく。着衣したまま事に及ぶと、服を駄目にすることを学習しているからだ。ピオンは噛みつくことによって少し満足したようで、油断している間に下着まで全て脱いだ。
 ピオンの顔を見つめると、何時も身に着けているゴーグルの奥には欲情の色が宿っていて。見た途端、ぞくり、と体が熱を求めるかのように疼くのだった。
「はっ…、駄目な兄貴でごめんな」
 自分から求めるように首に手を回しキスをねだる。ピオンはそれに応えるように噛みつくようなキスを俺に浴びせた。
 口の中を泳ぐ舌を捕えるような激しい動きで口内をかき回される。合間に息をしようと口を話しても、すぐに捕まえられ、引き戻された。
 ピオンは口を離したと思ったら、既に勃起していた俺の性器を掴み、激しく擦るように動かした。
「っ…!ふ、うあ…」
「もっと鳴いて」
「兄の喘ぎ声聞きたいなんてとんだ悪趣味だな…!」
 ピオンに翻弄されながらも、俺は片手でベッドテーブルの引出を開け、前、ここを使った時に置いて帰ったローションを取り出した。ピオンの張ったズボンの前を軽く撫でると、ピクンと反応すると同時に低く呻いた。そのままベルトを外し性器を解放してやると、ピオンは耳元で「触って」と囁いた。
 ローションを手に取り、弟のモノをゆっくりと擦る。
「あ、い、兄貴、きもちいい、もっと、もっと」
 途端、どうしようもなく気持ちいと言わんばかりに俺に抱き着いて喘ぐ弟を見て、気持ち良ければ今はなんでもいいんだろうなあとぼんやりと考えた。
「いれたい?」
「っいれたい、もっと、気持ちよくなりたい」
 ローションでべたついてない片手で弟がしているゴーグルをとってベッドテーブルに置く。弟の顔はよだれと涙でべしょべしょになっており、思わず手でそれをぬぐった。
 スイッチが入れ替わる瞬間にももう慣れた。さっきまでの加虐的な態度から一転して、性に従順になる瞬間。そうやってなるべく、人を殺さない様に自分をコントロールする努力をしたのだろう。最も、おかげでこういったおかしいことにはなっているが。
 ピオンは自分の服を脱ぎ捨てた後、俺の返事などお構いなしに、無理やり俺の中に入っている。
 ほとんど慣らされていないそこは痛みを伴ったが、今日の仕事内容を知っていた為、ある程度準備をしていたのが功を奏した。
「ん、っあ、はあっ、すごい、気持ちい」
「っ、ピオン、好きにしていいからな」
 好き勝手に腰を打ち付けながら喘ぐピオンに足を無理やり絡めて自分も快感を追う。
「だめ、ゼル、いく、いく」
「っ、どーぞ」
「っー!」
 ピオンの体がびくびくと痙攣して、俺の中に精液が注ぎ込まれる。よしよし、と頭を撫でると、そのまま俺の上に倒れ意識を失ったようだった。
「おも…」
 上に乗ったピオンをどかし、きちんとした体制でベッドに寝かせる。
 弟にあてられた俺の熱は未だに解放されていない。俺はピオンの上に跨り、彼の口に優しくキスをした。
「ふ…」
 口を繋げたまま自分の性器を何時もやっているように激しく擦る。それでは足りなくなって、ピオンの腹に性器を擦りつけ、さっきまでピオンが入っていた秘部へと指を入れた。
「っあ、ピオン、気持ちいい、お前が欲しい…!」
 弟がやったように、自分も弟の首元を甘噛みする。気を失ったピオンは一切気が付かない。でも、それでいいんだ。
 俺がこんなダメな兄だと知られたくない。間違えて俺を押し倒してしまうお前と違って、正気なのにこんなにもお前が欲しくなる愚か者だと知られたくない。
「あ、あ、い、く、ピオン、ピオン…」
 弟の名前を呼びながら、俺は彼の腹に欲をぶちまけた。
 息を整え、再びピオンの顔を覗いた。普段見慣れているゴーグル姿ではなく、素顔の彼の寝顔が愛おしかった。でもこれは家族愛であり、他人に向ける愛ではない、そういった愛ではない、と再確認した。
 もしかしたら、俺もとっくに正気じゃないのかもな。と愛する弟の頭をもう一度やさしく撫でた後、自分の中に残った弟の精液と、弟の腹の上に散らばった自分の精液の後処理を思い出し、深いため息をついたのだった。

 翌朝、「兄貴、起きれるか?」と正気に戻ったピオンの声で目が覚めた。
 起き上がろうとしたらギシギシと体が痛く、重かったので、「…あーもうちっと寝たいわ」と返事をすると、ピオンは先に会社に戻り報告をしてくると告げ部屋を後にした。
 きっと、ピオンは俺と性行為をしたことが無いのだろう。記憶にはあるだろうけど、正気じゃない時の記憶なんてただ後悔と罪悪感しか残らない。
 だからと言って恋人でもなければ、恋人になりたいと言う欲も無い。
 ただ、なんだか少しむなしいような気がしてもぞもぞと布団に入り、もう一眠りした。

 時計が昼に回った頃、俺はゆっくりと目をさまして洋服を着る。
 スーツの胸ポケットに入ってる煙草をまさぐると、箱の中には一本も入っていなかった。
 頭を掻きながら何気なく視線をベッドテーブルに移すと、紙切れと一緒にサンドイッチとチョコレートと蠍の銘柄の煙草が置いてあった。
≪昨日はありがとう、今日は仕事休みでいいってさ。 スコーピオン
 紙切れのすみっこには、下手な絵でニコニコマークが描いてあった。
 サンドイッチを袋から出し、一口食べる。俺の好きなハムとレタスが挟まったサンドイッチをほおばりながら、こんな関係も悪くないな。と煙草に描いてある蠍を見つめた後、胸ポケットにしまったのだった。